2002年10月 摩利支と水見色かおりの茶園より


 
 先日、台湾からのお客様達といっしょに摩利支と水見色かおりの茶園へ登って来ました。(「行く」というより「登る」と表現するほう相応しそうなところです。)
 紅葉にはまだ早いけれど、秋の雰囲気はあちらこちらに十分に感じられました

 夏を過ぎ、力を貯えた茶の樹の姿。ハチの羽音。
 
 心地よさの中に冬を予感させる山の空気。

 
 秋ですね。

 ちょうどお昼時に茶園へとなりましたので、簡単な昼食を山で食べる事になりました。
 

お茶は水見色かおりを一枝とり、焚き火で焙ってからやかんへ入れて煮だしました。やかんへ入れるタイミングは葉を焦げないように焙り、青臭みがとれた時です。(焦がしてしまわない方がいいですよ。)

 焚き火の煙、真っ黒なやかん。ちょっと汚れたコップも御愛嬌。山森さんは「山賊茶藝」などと楽しそうに笑っていました。

 お茶が美味しいのはいうまでもありません。



 山小屋で、日本や台湾のお茶の話しをしつつ何種類かのお茶を楽しみました。ああ、これもお茶の楽しみ方なのです。

 以前、萬千吉茶坊の綾子さんが「五感で楽しめるようなお茶を」と言った言葉がよぎりました。

 畳の上やテーブルの上には無いお茶の楽しみ方があります。そのお茶の生まれた土地へ足を運び、その土地を眺めつつ茶を楽しむ。これこそが至福なのかもしれません。



 茶園を見つつ来年の春に思いを馳せます。
 みなさん、私達と一緒にこの山へいってお茶摘みをしてみませんか?生産家が丹誠をした畑ですから大切にしてください。これさえ守ってくれるのなら、ともに山へ登りましょう。

 緑の青々とした力強い新芽、人々の声、笑い顔。茶園に微かに響く茶摘みの音。満開の山桜。そして、その土地のお茶を味わう。

 楽しそうでしょ。いや、とても気持ちの良い時間ですよ。きっとね。

2002.10月 錦園店主 石部健太朗